ハバロフスク~ウラジオストク間の昼間の特急列車が運転を開始しました
現在運休中の夜行寝台特急「オケアン」号に代わり、ハバロフスク~ウラジオストク間で昼間の特急列車が運転を開始しました。この列車を利用した極東ロシア在住の日本人が報告してくれました。
コロナ禍に伴う需要の減少により、日本人観光客もよく利用してきたハバロフスク~ウラジオストク間の「オケアン」号は昨年から運休しており、年末年始や夏休みシーズンなど限られた季節のみ「復便」が行われています(2021年の「オケアン」号運転予定は、ハバロフスク発6月24日~9月17日、ウラジオストク発6月23日~9月16日の間のみ)。
これに代わって、昨年12月から、ハバロフスク~ウラジオストク間には昼間の特急列車が運転を開始しました。この列車の様子をお知らせします。
・101列車(毎日運転) ウラジオストク11:32発→ハバロフスク24:38着
・102列車(毎日運転) ハバロフスク8:55発→ウラジオストク22:15着
この列車には、これまでの「オケアン」号や他のロシアの長距離列車と比べても、いくつかのユニークな特徴があります。
まず、800km近い距離を走るにも関わらず、夜行列車ではなく、13時間以上かけて昼間走ること。ハバロフスク到着は午前0時を過ぎて深夜になりますが、市内に住む人ならば「帰宅の足」として利用できないことはない時間帯でしょう。
ふたつめは、昼間の列車にも関わらず全車寝台車(クペー。4人用個室のいわゆる「二等車」)で編成されていること。編成は3~5両と短く、座席車や食堂車、開放型寝台車(いわゆる三等寝台)はありません。車内には寝具も備わり、料金にはシーツ代等もちゃんと含まれているので、堂々と寝て行けます。
三つめは、寝台車には新型客車やリノベーションしたばかりの状態の良い客車を使用し、大幅な割引が行われるなど、営業努力がみられること。ハバロフスク~ウラジオストク間は、東京からたとえれば青森や岡山よりも長い距離ですが、この列車のクペーを利用すれば、片道799~1,499ルーブルという思い切った割引が適用されます(上段か下段か、また、利用・購入時期によって異なります。今のレートで約1,300~2,400円)。
2月から3月にかけて、一部区間で2度ほど実際に乗ってみました。車内やホームでの写真と合わせてご覧ください。
ハバロフスク駅にて。この日のウラジオストク行き102列車は4両編成。乗車率は半分弱で、空いてました。号車番号は、なぜか6~9号車と割り振られていました。
この日の9号車は、1992年ドイツ(旧東ドイツ)製の古い客車を2020年11月にリノベーションしたばかりの車両でした。車内は、ロシア鉄道のコーポレートカラーを用いたスタイリッシュなものにリフォームされ、電源や充電用USBも各寝台に設置されています。
別の日に乗った101列車は、ロシア製の新型寝台車でした。シートの背もたれの裏側がベッドになっており、寝台をセットする時には、座席の背を手前に倒して使います。この日は3両編成でしたが半分弱しか乗っておらず、空いていました。
昼間なのであまり必要ないかも知れませんが、新型寝台車にはシャワー室も設置されています。
ハバロフスクを出た列車は、市内からもよく見える大ヘフツィール山脈(標高949m)を右手に見ながら進みます。
新型寝台車では、車内の廊下にタッチパネル式のスクリーンが設置されており、時刻表や車内販売のメニュー表などが表示されています。車内販売は、軽食・お菓子やソフトドリンクが中心で、車掌から買います。
日本以上にキャッシュレス決済が進んでいるロシア。車内販売の支払いにも、カードでのタッチ決済やQRコード決済が使えました。
こちらは、古いドイツ製の客車の車内。ロシアや旧ソ連の鉄道に詳しい方にはおなじみのいわゆるアメンドルフ客車ですが、ソ連崩壊直後から30年近く使われてきたとは思えない程、車内は徹底してリノベーションされていました。
リフォームしたドイツ客車には、通路のタッチスクリーンまでは設置されていませんが、それに代わり、3月8日の国際婦人デーを祝うロシア鉄道特製ポスターが掲示されていました。
ハバロフスク行き101列車、ウラジオストク行き102列車とも、ほぼ中間地点にあたるルジノ駅(沿海地方)で15分停車し、小休止します。ルジノ駅には駅舎の目の前にリカーショップのチェーン店があり、停車中の買い物も十分可能ですが、ロシアの公共交通機関での飲酒規制は日本よりもずっと厳しいのでご注意を。車内へのお酒の持ち込みや飲酒(食堂車を除く)は禁止されており、罰則もあります。
ウラジオストクに向けて走り去って行く102列車。この日は4両編成でした。他の列車と比べると、とても短いです。
車内掲示の時刻表。左半分がハバロフスク行き101列車、右半分がウラジオストク行き102列車となっています。
ちなみにウラジオストクとモスクワを結ぶ「ロシア」号は現在も運行しています。全体としては、運休している列車はわずかです。極東ロシアでは、オケアン号と、ハバロフスク~ナホトカ間の夜行列車(113/114列車、旧ボストーク号)くらいです。
ロシア号の車両は2000年代までは、中国鉄道のような地味な緑色か、一部の列車はかなり“微妙な”色彩センスの専用カラーに塗られていて、それなりにバラエティがありました。その後、赤と濃淡グレーのロシア鉄道のコーポレートカラーに統一されたことで、いまやサハリンからカリーニングラードまで、列車ごとの見分けがつきません。
2018年頃、ロシア地理学協会の記念行事で珍しく「ロシア号」にスペマ(特別塗装)編成が登場し、その後、編成はばらされたものの少しの間使われていました。カール・ボグダノヴィッチという19世紀末から20世紀前半に活躍した地理・地質学者で、シベリア、中央アジア、コーカサスの探検で業績を残したそうです。
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。