ロシアの民族衣装は美しい装飾的な刺繍で彩られています
ハバロフスクの博物館(正式名:ハバロフスク地方グロデコフ記念郷土史博物館 Хабаровский Краевой Музей имени Н.И. Гродекова)で、19世紀から20世紀初頭にかけてのロシアの民族衣装の企画展が開催されています。
この企画展では、ロシアと旧ソ連邦の各地に住む人々の伝統的な衣装や帽子、靴などの展示を通じて、ロシアの民族文化の多様性を伝えようとしています。なかでも、装飾的な豊かさを誇る美しい刺繍の伝統的な技法は、アート作品と呼びうるような傑作をたくさん生み出しました。
一方、これはどこの国でもそうかもしれませんが、今日においてこうした優れた伝統も、特定の地域の民族の文化的なシンボルとして残されているにすぎないところがあります。この回顧展で意図されているのは、ロシア人が本来持っていた伝統のダイナミズムをたどることでしょう。
現地旅行会社ポータル・セゾノフのアナスタシア・セパテシコさんが展示を案内してくれました。
「これは1902年にロシアで撮られた民族衣装の写真です。モノクロ写真なので、彼女たちが身につけている衣装のカラフルな色彩を伝えることができません。これから展示を見ていきましょう。
当時の農家ではこのドレスのような服を着て、農作業や収穫をしていたそうです。
この刺繍のパターンも面白いですね。
これらはお祭りのときやお祝いの日に着た衣装だそうです。
さまざまなタッチの刺繍があります。私は見たことがないものばかりでした。
スカートやロングソックス、靴なども、かわいい刺繍があしらわれています。これはバルト諸国の衣装です。
これは女性のドレスの上に首からかけるビブカラー(つけ襟)です。金や銀の糸で刺繍された貴重で美しいものです。
面白いことに、最近のロシアではビブカラーが流行っていて、現代的なものはこんな感じです。
刺繍には本当にさまざまなデザインがあります。
帽子や靴もあります。これはイスラム帽なので、コーカサスや中央アジアのものだと思われます。
これは北方の先住民族の衣装です。
ウズベキスタンやタジキスタンの衣装もあります
これらの貴重な展示品は、サンクトペテルブルクにあるロシア民族博物館のコレクションで、ロシア全土で巡回展示されています。
展示資料の解説によると、これらの民族衣装は、当時のそれぞれの地域の経済や伝統、交易によって手に入れた多様な素材に条件づけられていたといいます。
最も高価な素材は、先ほどのビブカラーで、19世紀に工場で生産された金と銀の糸でした。高貴な輝きを放つシルクはいたるところで人気があり、中央アジアやコーカサス地方で生産され、各地に輸出されました。
ビーズは、ヴォルガ地方とシベリアで愛好され、バルト諸国ではガラスが人気でした。亜麻や麻、綿、羊毛はヨーロッパロシアの人々によって広く使用されていました。19世紀末になると、天然染料は化学染料に道を譲り、刺繍の配色の変化につながりました。
「先ほど、最近のロシア女性の間でビブカラーが流行している話をしましたが、花柄のドレスも人気があります。今回の展示を観て、ロシア人の好みは伝統的につながっていると感じました」とセパテシコさんは話しています。
確かに、現代のロシア人がこれらの民族衣装を着ても似合うことでしょう。
彼女は、昨年7月「スバルカ(Svalka)」というフリマショップをハバロフスクにオープンさせたのですが、そこで扱っている女性ものの古着にも、花柄の刺繍をあしらったものがたくさんあるそうです。
こういう何気ない柄にも伝統的なロシア人の好みが現れているのかもしれません。
この企画展は2月14日まで開催されています。
※企画展の告知はこちら
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