MONOCHROME-モノクローム寫眞「宗谷海峡を越えるサハリン桜前線」
お花見シーズンがあったことなど、すっかり忘れていた5月の今日この頃、サハリンでは桜が開花するそうです。稚内在住で、かつてサハリンに滞在していた中川善博さんは、日本における桜前線が宗谷海峡を越えてサハリンでも見られるのだといいます。
国境を超えた桜前線とはどのようなものなのか。中川さんの話を聞きましょう。
日本国内各地で「桜」が話題になるのは3月下旬や4月上旬で、地域によっては4月後半頃までであろうか? 毎年のように若干の情況の違いはあるので、多少の前後はあるだろう。
そして5月に入って「桜」が各地で「過去形」のように語られる頃、根室や稚内で桜が咲いたという話しになり、所謂“桜前線”について「終着」というようなことになる。「国内最後の桜の開花」というのは、大概は根室か稚内だ。
ここで「一寸待った!!」と申し上げたい。所謂”桜前線”だが、実は宗谷海峡を越えている。サハリンの街でも、稚内等の北海道の北側で見受けられるエゾヤマザクラの木が在って、毎年のように花は咲いているのだ。
サハリンで見受けられる桜は、所謂“樺太時代”の木も在るようだが、その限りでもない。もっと新しい時代に植栽された木も在るようだ。知名度が高い銘木や、夥しい桜が集まっているというような場所は見受けられない。それでも桜は確かに咲く。
所謂“樺太時代”の終盤、現在のユジノサハリンスクである豊原では市制が施行された。そのため、豊原市が「国内最北の市」ということになった。
桜… 噴水… : サハリン州郷土博物館(2017.05.20)
そういうような具合に「その先…」が「在った」ということに時々想いが巡る。稚内の数日から1週間後という感じが多いが、ユジノサハリンスク辺りでもエゾヤマザクラが花を咲かせる。「人為的な境界」を超えた何かを感じる。
桜と言えば、サハリンで敬愛されるチェーホフの戯曲の一つに『桜の園』という作品が在る。方々の劇団がこれを上演しているが、サハリンの劇団でも取り上げられていて、興味深く観劇をしたことも思い出される。
単純に、サハリンで桜を観たというのは好い想い出(その時にサハリンに居合わせた機会が限られ、写真はやや少ない……)なのだが、それを思い出す都度に「宗谷海峡を越える桜前線」というようなことが思い浮かぶ。そして「現在」の「人為的な境界」を超えた地域の歴史を想う。
(中川善博)
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