ひと晩だけのシベリア横断鉄道、夜行寝台の食堂車で楽しむ料理とお酒
シベリア横断鉄道は極東ロシアの日本海に面した港町、ウラジオストクから約9300km離れたモスクワまで約1週間かけて走る世界最長の大陸横断鉄道です。
近年、車両が新しくなり、乗り心地はなかなか快適ですが、1週間シャワーなしで移動するのは相当な覚悟がいりそうです。でも、もしひと晩きりの夜行寝台でシベリア横断鉄道の旅がプチ体験できるとしたら、乗ってみたいと思う人も多いのではないでしょうか。なにしろそこには、もう日本ではほぼ絶滅してしまった食堂車が待っているのですから。
ハバロフスク駅午後9時発の夜行寝台「オケアン号」に乗ると、ウラジオストクに朝8時半に着きます。オケアン(Океан)はロシア語で「大洋」の意味。両都市間を11時間半で結んでいます。
この寝台列車は毎日運行しているので、ひと晩きりのシベリア横断鉄道の乗車体験を楽しむのにうってつけです。ウラジオストク発ハバロフスク行きも、ほぼ同じ時刻に出ているので、逆のコースに乗ってもいいでしょう。
出発30分前にハバロフスク駅を訪ね、駅舎の中にある食堂でひと休み。そこはロシアの大衆食堂スタローヴァヤです。食事もできるし、コーヒーでも飲みながら、列車の出発をゆっくり待ちましょう。
出発10分前になると、各車両の扉が開きます。若者から家族連れまで、大きなスーツケースを抱えた乗客たちは、車掌さんの検札を経て列車に乗り込みます。
各車両にひとりずついる車掌さんはロシアの場合はほぼ女性で、一見職務に忠実な堅物そうなのですが、実はとても親切です。なかにはチャーミングな女性もいて、驚いてしまいます。ちなみに彼女は、この日ではなく、ウラジオストク駅から乗るときに出合った車掌さんです。
車両には5つのクラスがあって「リュクス(特等寝台)」「エスバー(1等寝台)」「クペ(2等寝台)」「プラツカールトヌイ(3等寝台)」と「座席車」に分かれています。この写真は4人用の2等寝台です。
荷物を下ろして一服していると、列車は定刻どおり静かに動き出しました。それを合図に、すぐにでも食堂車を訪ねてみましょう。なぜそんなにせっかちかというと、食堂車の営業時間は午後11時までなので、利用時間はそんなに長くはないからです。
「オケアン号」の食堂車は、紫色を基調としたしゃれた雰囲気で、4人掛けのテーブル席と奥にカウンターバーのようなスペースがあります。ここでは、ディナーやアルコールをカジュアルな雰囲気で楽しめます。
メニューはロシア語に英語が併記されています。ベジタリアンメニューもあります。
この日はボルシチと白身魚のソテー、肉入りポテトサラダを注文し、最初はビールで乾杯しました。お値段は街場のレストランに比べると若干高い気がしますが、まあこれも食堂車という体験付きと思えば気になるほどのことではないでしょう。白身魚のソテー850ルーブル(約1450円)とボルシチ300ルーブル(約510円)、ロシア風サラダ400ルーブル(約680円)でした。
実は、この列車には何度か乗っていて、豚肉のソテーやサラミ、ポテトチップスなどの軽いつまみとビールをいただいた日もありました。
カウンターバーには、各種ビールやウィスキー、ワイン、ウォッカなどのボトルが置かれています。ビールはアサヒスーパードライや外国産ビールのライセンス製造からロシア産まであります。
食堂車を利用したくなるもうひとつの理由は、ロシアの列車のコンパートメントの中でアルコールを飲むのは基本NGだからです。ホテルの部屋飲みのように、市場で買ってきたつまみを肴にワインを開けるというようなお楽しみを満喫できないので、食堂車に行くしかないのです。
ところで、乗ってみるまで知らなかったのですが、「オケアン号」には夜食が付くようで、列車が動き出すとすぐ車掌が注文を取りに来きます。なんのことか最初はよくわからなかったので、適当に相槌を打っていたら、しばらくすると、ロシア風クレープのブリヌィとミネラルウオーターが届けられました。
ソバの実のカーシャが夜食の日もありました。
わざわざ食堂車に足を運ぶ私たちのような日本人客はともかく、一般のロシア人は食事を済まして乗り込んでくるのが普通です。それでも小腹がすいた人には夜食もそうですし、各車両に備えられた温水器があるので、カップラーメンにお湯を入れて部屋で食べている人もいます。
興奮冷めやまぬなか、就寝タイム。各寝台にカーテンはないので、知らない人と同じコンパートメントになると、ちょっと気を遣う人もいるかもしれません。
寝付かれなかったわけではないのですが、寝台車に乗ると、ふだんより早く目が覚めてしまいました。まだ空の明けない車窓の風景をぼんやり眺めながら、温水器でインスタントコーヒーをいれて飲みながら時間をつぶしていると、同じように早起きのロシア人たちがのそのそ起き出してきました。
到着は8時半なので、まだ少し時間はあります。7時半になったので、それほど食欲はなかったのですが、食堂車に行ってみることにしました。
昨日の給仕の女性がいて、1枚の簡単なメニューを渡されました。ホットドッグとボルシチ、そしてコーヒーを注文しました。その頃には車窓の外は明るくなっていました。
「オケアン号」のチケットは駅でも購入できますが、日本出発前に予約するにはロシアの鉄道予約サイトを使う手もあります。
運賃はシーズンによってけっこう変動があり、1等6800~10000ルーブル(約1万1600~1万7000円)、2等2900~6000ルーブル(約4900~1万円)が目安です。
ウラジオストク駅に着くと、乗客たちはプラットフォームに降り立ちました。
ホームからは直接駅の構内には入れないので、重い荷物を運んで、この階段を上がらなくてはなりません。検札は特にありません。ウラジオストク駅からはタクシーでホテルまで向かうことになります。
※この記事は2018年12月にハバロフスク発ウラジオストク行きの「オケアン号」に乗車したときのもので、料金や列車の発車時刻は現在とは違います。ご了承ください。
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