サハリンで「路線バスの旅」をやってみた~コルサコフ、ドリンスク、ホルムスク編
テレビでよくやっている「路線バスの旅」。海外で同じことをやっても楽しいものです。
そこでサハリンでやってみました(2017年6月に実施。バス料金は当時のものです)。
サハリンは鉄道の本数が少ないぶん、州都のユジノサハリンスクを中心に近郊の町を結ぶ路線バスが普及しています。
今回紹介するのは、ユジノサハリンスクからコルサコフ、ドリンスクからユジノサハリンスク、ユジノサハリンスクからホルムスクへの「路線バスの旅」です。どのルートも幹線道路は舗装されていて快適です。なにより地元の人たちと一緒にバスに揺られて旅するのは面白いです。
起点はユジノサハリンスク駅を背にした右側にあるバスターミナルです。
近郊の町にはたくさんの路線バスが出ています。少し遠目の場所に行く場合は、本数が少ないので、事前に発車時刻を調べて乗車券を購入することになりますが、コルサコフやドリンスクへは10数分間隔でバスが出ているので、バスの番号と行き先を確認してそのままバスに乗り込みます。
ターミナルの周辺には、バスを待つ乗客がたくさんいます。
手前のブルーのバスはコルサコフ行きです。
出発時刻を待つ運転手のスナップ。このバスはかなり老朽化していますが、新しいバスもあります。
まずユジノサハリンスクからコルサコフへ。コルサコフ行きのバスは片道125ルーブル(当時)。バスの中で運転手に払います。南に向かって約50分も走ると、海が見えてきます。
これはコルサコフ港です。桟橋の手前の小さなフェリーは北海道の稚内行きの「ペンギン33号」です。この船は2018年まで定期航路として運航していたのですが、現在は残念ながら、運航していません。
コルサコフはサハリン南部の港町で、日本時代の樺太(からふと)の記憶がそこかしこに残っています。半日もあれば散策できる大きさです。港の背後にある高台の展望台から、天気のいい日は稚内が見えるそうです。旧名は「大泊(おおどまり)」でした。
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日本時代の記憶がそこかしこに残るサハリンの港町コルサコフ : ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌 (exblog.jp)
次は、ドリンスクからユジノサハリンスクへ。ふつうの路線バスが走っています。片道140ルーブル(当時)。約1時間の旅です。
ドリンスクの旧名は「落合(おちあい)」でした。ドリンスク駅の近くに、日本時代に建設された旧落合王子製紙工場の廃墟があります。大正6年(1917年)に操業開始したとのことで、終戦後はソ連の国営企業として1995年まで操業し、停止後は温水と暖房を供給する施設として使われています。実は王子製紙の廃墟はコルサコフにもありますし、その他の町にもいくつかあります(その話はまた別の機会に)。
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旧落合王子製紙工場跡の管理人は「こうなったのはゴルバチョフの頃だ」と話す : ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌 (exblog.jp)
最後はユジノサハリンスクからホルムスクへ。同じバスターミナルからミニバスに乗ります。片道350ルーブル、所要2時間。本数は1時間に1本です。
ホルムスクはサハリンの西海岸にあり、ユジノサハリンスクから山を越えて走ります。道中、真っ赤な鳥居と中国風のデザインの民家が見えました。結局、それがなんだかわかりませんでしたが、ロシア人からみると、日本と中国はミックスされて理解されているのだろうと思います。
山間にはきれいにペイントされたコテージがいくつもありました。前には農園があり、これはロシア人が夏を過ごす菜園付きセカンドハウスのダーチャです。
ミニバスの中は狭いので、乗客は片寄せあって乗っているのですが、カメラを持つぼくを見て、ある若い男性は窓側の席を譲ってくれました。ロシアの人って、そういう気遣いをする人たちなんです。
しばらくすると、港が見えてきました。ホルムスクからは対岸のロシア本土への航路もあります。
ホルムスクの旧名は「真岡(まおか)」でした。1945年8月20日、ソ連軍が侵攻したとき、真岡郵便局電話交換手の女性9名が自決した真岡郵便電信局事件で有名です。
ホルムスクは港に沿ってできた町で、すぐに丘があり、団地が並んでいます。午後になると海霧が晴れて、青空が見えてきました。
実は、ホルムスクにも旧王子製紙工場の廃墟があります。ここの廃墟はなかなか見応えがあります。
詳しくはこちら↓
廃墟の中で出会った少年たち~旧真岡王子製紙工場を歩く : ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌 (exblog.jp)
これがホルムスクのバスターミナルです。
さらに南に位置するネヴェリスク方面などの時刻表です。
サハリンには日本時代の遺構や敗戦当時の記憶を物語る場所がいくつもあります。サハリン南部であれば、たいていの場所に路線バスで行けるので、訪ねてみるのをおすすめします。
もっとも、いまこの島に住んでいるロシア人たちは、素朴で日本人に対する親しみの感情を持っている人が多いです。それは路線バスで出会った人たちとの交流から自然に伝わってくるはずです。
サハリンをバスで旅していると、昔のアジアの旅をちょっぴり思い出します。
(撮影/佐藤憲一)
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