アラビアンナイトのようなエンタメ・レストランがあります
ハバロフスクは静かで落ち着いた町ですが、外食シーンはなかなか元気です。これまでいくつかのレストランやバーのことを書いてきましたが、今回はとっておきの店を紹介しましょう。
※ 過去に紹介した他のレストランやバーの記事は、本文の最後にまとめて掲載しておきます。
それは「スルタンバザール(СУЛТАН БАЗАР)」という名のコーカサスレストランです。
場所は、アムール川を見晴らすコムソモーリスカヤ広場からまっすぐに延びるムラヴィヨフ・アムールスキー通りのすぐそば、つまり南端にあります。この周辺は、ハバロフスクにロシア人が現れた1858年以降に建てられた、当時ヨーロッパで流行したさまざまな様式の建築が野外博物館のように品よく並んでいます。
レンガ造りの建物に入って階段を上ると、店内はまるでアラビアンナイトの世界で驚きます。
色とりどりの絨毯を壁に飾り、アラビアの弦楽器や食器、水たばこ、魔法のランプ(たぶん)、天井から吊り下げられたカゴ入りの真っ赤なオウムなど、中央アジア風のアイテムをこれでもかと並べたテーマパーク風インテリアで構成されているのです。
なかでもドキリとするのが、エキゾチックなコスチュームと化粧を施したロシア人店員のコスプレ度の濃さです。TDRなんてもう比ではありません。音楽やダンスでにぎやかに客をもてなしてくれるのです。
ここは食事とともに楽しい時間を過ごすためのエンタメ・レストランです。店員たちにはそれぞれキャラクター設定があり、たとえば専用の個室で煙をくゆらせる水たばこ売りの男性役、地元のファミリー客と一緒に輪投げに興じる道化師役といった具合です。
彼らは料理の注文取りや給仕の合間に、あの手この手で客を楽しませ、店の雰囲気を盛り上げているのです。
そんな光景を眺めているだけでも面白いのですが、メニューもなかなか楽しめます。こういう趣向の店だけに、本格的なコーカサス料理を味わうというよりは、中央アジア各地のメニューを幅広くアレンジしている感じのようです。クスクスや現地風炊き込みご飯のプロフなどもあります。
羊や牛の串焼きであるシャシリクやケバブを小麦粉の薄皮に包んだカバビのような肉料理は中央アジア特有のスパイスで味つけられ、さわやかなスパイシーさが口の中に香ります。ハチャプリというタマゴ入りピザパンやご当地風水餃子のヒンカリなど、南コーカサスのジョージア(旧グルジア)料理もあります。
ドリンクはロシアのローカルビールや、モルドバ、ジョージアなどコーカサス産のワインです。これらの料理の独特のスパイシーさには、セミスイートなコーカサスワインがよく合います。
南ジョージアに位置するボルジョミ(BORJOMI)という町のミネラルソーダもありました。天然鉱泉で口当たりのよいガス入りがロシアのみならず、世界的に人気で、有名なジョージアワインを凌いで、この国の輸出品のナンバーワンだそうです。
ところで、なぜ極東ロシアの町で、旧ソ連邦の西のはずれのコーカサス料理が味わえるのでしょうか。答えは簡単です。なぜなら、ハバロフスクにはコーカサスや中央アジアの人々が普通に住んでいますし、ロシア人にとって伝統的に美食の宝庫とされたのが、これらの地域だったからです。
ロシア人にとって外食はエンターテインメントそのものなのですね。ハレの場として家族や仲間と一緒に繰り出すのがレストランという場です。だったら、思いっきり楽しもうと。
その意味で、コーカサスレストランというのは、ハバロフスクの人たちにとってうってつけの場所なのかもしれません。
それは、我々日本人にとって未知の世界というべきものでしょう。こんなレストランに行ってみたいと思いませんか。
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