まだ誰も知らないオホーツク海のホエールウォッチングの聖地「シャンタル諸島」
極東ロシアのハバロフスク地方は、オホーツク海に面し、大河アムールが南北に流れています。その河口はサハリン北西部近くの対岸にあります。
ハバロフスクは美しい都会ですが、その郊外に想像以上に大きな自然が広がっていて、ロシアではエコツーリズムのメッカとして知られています。
なかでもハバロフスク政府観光局が一押ししているのがシャンタル諸島です。そこは、世界の旅行マニアの間でも、まだほとんど知られていないホエールウォッチングの聖地です。
なにしろアクセスが大変で、ハバロフスクから車で12~14時間走り、そこからヘリコプターで1時間半かけてオホーツク海のベースキャンプに移動するという秘境の地です(ヘリコプターに乗らずに車で行くなら、所要19~24時間だそう)。
シャンタル諸島には大小15の島があり、現地では島々をボートで移動し、 島によっては、 テントを張ってキャンプしなければなりません。ワイルドな冒険旅行になります。だから、年間訪れる観光客は多くて100名程度。キャンプ地のすぐそばの海辺でホッキョククジラの姿が見られるというのだから驚きです。オホーツク海はホッキョククジラの棲息する最南端で、静かな入江でのんびり回遊する姿は、北極圏でもめったに見られないそうです。
クジラだけでなく、ヒグマやオオカミ、アカギツネ、アライグマ、カワウソ、イタチ、クロテンなど、多くの哺乳類が目の前で見られます。島々には多くの海鳥がいて、コロニーを形成しています。アザラシやオットセイも見られます。彼らは人間を恐れないので、写真を撮り放題です。
アクセスが難しい関係で、ロシアの国立公園となったのは2013年12月30日と最近のことです。
この秘境ツアーを企画催行しているのは、ハバロフスクの旅行会社Far Eastern Center of Active Recreation and Travelです。
ロシアの旅行会社のサイトの情報から、ハバロフスク発のシャンタル諸島ツアーの概要を簡単に紹介します。
<1日目 >
ハバロフスクから長距離夜行バスで、シャンタル諸島行きのヘリコプター基地のある集落ブリアカン(Бриакан)へ。乗車時間は12~14時間で、道中シベリアで唯一の航空機工場のあるコムソモリスク・ナ・アムーレ(Комсомольск-на-Амуре)を通ります。
<2日目>
朝、ブリアカン村に到着。朝食後、ヘリコプターに乗ってシャンタル諸島観光のベースキャンプがあるオンガチャン湾(бухта онгачан)のキャンプへ。所要1時間半。キャンプにチェックインし、昼食をとります。
オンガチャン湾はシャンタル諸島の南に位置するトゥーグル半島にあり、すぐそばの海辺にクジラやシャチがいます。午後は、海岸沿いを散歩したり、ホエールウォッチングができる展望台に上ったりします。このキャンプにはスチームサウナなどの施設もあり、快適に過ごせます。食事も目の前の海でとれた海鮮を調理します。
<3日目>
オンガチャン湾のすぐ北にあるスモール・シャンタル島(Остров Малый Шантар)の南にあるアブレック湾(бухта Абрек)に向かいます。そこには、何百頭ものアザラシがコロニーを形成しています。
<4日目>
シャンタル諸島で最大の島、ビッグ・シャンタル島(ОстровБольшой Шантар)へ行きます。島にはこの地域で唯一の海洋気象観測所があります。年間を通じて4人が勤務しています。島の川の河口に入ると、19世紀のアメリカの捕鯨基地の遺構があります。当時、アメリカ人はこの海域までクジラを追いかけ、鯨油や骨を取っていたのです。
島の南西に突き出たラドゥジニー岬(мыс Радужный)には、碧玉の巨大な崖があります。赤や緑に変化した天然の崖は地質学的な価値があります。その後、2番目に大きいフェクリトバ島(Остров Феклистова)にボートで移動し、テントを張って夜を過ごします。
<5日目 >
フェクリトバ島の中央を流れるメドヴェジヤ川(река Медвежья)には、この時期、真っ赤に腫れ上がったサケが産卵のために上る姿が見られます。昼食後、テントをたたみ、ボートでオンガチャン湾に戻ります。
途中、ウチチイ島(Остров Утичий)のそばを通ると、何千もの海鳥たちがコロニーをつくっているのを見るでしょう。
<6日目>
ウランゲル湾(Бухта Врангеля)にボートで向かいます。所要約2時間。そこはホエールウォッチングの聖地です。ボートは途中、ベリーチ島(остров Беличий)や中島、南島を通ります。到着すると、居心地のいい湾のベースにテントを張ります。
<7日目>
ウランゲル湾では、他の地域では観ることの難しいといわれるホッキョククジラが見ることができます。彼らは北半球の最北端の海域に棲息していますが、この種の最南端のグループはオホーツク海にいるのです。運が良ければ、手漕ぎボートでそばに近づくこともできます。
<8日目>
ランチタイムまでにキャンプに戻り、オンガチャン湾に戻ります。途中でシャチに会う可能性が高いです。ボートはリンドホルム海峡(пролив Линдгольма)を通過します。海峡の名は極東におけるロシア捕鯨の先駆者にちなんで名付けられました。天気が良ければ、海岸に沈む夕日を見ることができます。
<9日目>
この日は予備日で、天候が悪く、ホエールウォッチングができなかったときのために充てています。最終日ということで、夕方にはとれたての魚を使ったシーフード料理のガラディナーが待っています。
<10日目>
オンガチャン湾のキャンプからヘリコプターでブリアカンの村に戻ります。バスに乗り換え、ハバロフスクに向かいます。
<11日目>
朝、ハバロフスク着。
シャンタル諸島までの往復の移動をすべて空路にするなどのVIPツアーもあります。ちなみに、ツアー時期は7~8月までの年間2ヵ月しか催行されません。
シャンタル諸島に関する情報はまだ少ないので、今後新たに入手したら、報告したいと思います。
なおこのツアーを企画しているハバロフスクの旅行会社のБахт Мавлановさんの以下のYOUTUBEチャンネルでは、シャンタル諸島のツアーの様子を観ることができます。
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