ハバロフスクの博物館にはマンモスの骨とシャーマンの衣装がある!
海外旅行先でツアーコースに必ず入っている、その町の博物館を訪ねることに、正直あんまり気乗りしない人もいるかもしれません。展示の数が多すぎて、事前に相当勉強しておかないと、本当の面白さはわからないんだろうなあと諦めてしまいがちです。
でも、ハバロフスクの博物館(正式名:ハバロフスク地方グロデコフ記念郷土史博物館 Хабаровский Краевой Музей имени Н.И. Гродекова)は、意外に面白いところです。なかなかユニークな展示があり、歴史好きでなくても楽しめるからです。
館内は、極東ロシアの自然や先住民族の文化、そして歴史のセクションの3つに大きく分かれています。
最初に訪ねるのが自然のセクションで、極東ロシアのタイガの森にかつて生息していた巨大なマンモスのレプリカと骨、牙などが展示されています。昨年は東京、今冬は福岡、そして3月中旬以降、名古屋で開かれている「マンモス展」が話題を呼んでいますが、そこで展示されているマンモスや古代の動物たちの冷凍標本は、ロシア連邦サハ共和国で発掘されたものです。もちろん、極東ロシアにも、かつてマンモスはいたんです。
ハバロフスク地方には、野生のトラもいて、アムールタイガーと呼ばれています。地元の子供たちが展示を観ている様子がかわいいですね。ほかにもアムール河にいるチョウザメや野鳥たち、ヒョウやクマなどの動物や植物群の展示もあり、この地方の自然を知ることができるでしょう。
もうひとつ面白いのが、先住民族の展示です。彼らはロシア人がこの地にやって来る17世紀よりはるか前からこの地に住んで、狩猟や漁労生活をしていました。
彼らの身につけていた衣装やテントのような住居の写真や展示があります。
ハバロフスクは、大河アムールとウスリー川が交差する場所にありますから、彼らは丸太を掘って船をつくり、魚をとって暮らしていたのです。
アムール流域の先住民族の衣装の展示も面白いです。
彼らはテンなどの動物の毛皮を、当時の中国の王朝(明や清)と交易する代わりに、衣料を手に入れていました。でも、それをそのまま身につけるだけではなく、独自の文様やデザインの刺繍などを加えて、オリジナルなテキスタイルの世界を生み出しています。
興味深いのが、この地にいたシャーマンの衣装です。シャーマンは神や精霊と交信する職能を持った人で、極東ロシアの先住民族には部族ごとに必ずいました。
これはシャーマンが祈りの舞いの儀式を行うとき、腰にぶらさげて音を鳴らす腰鈴です。
これらの展示は、19世紀以降、この地に町を建設したロシア人たちが、先住民族との出会いの過程で、研究調査し、収集してきた成果といえるでしょう。
ハバロフスク地方グロデコフ記念郷土誌博物館は、1894年に設立された歴史ある文化施設で、名前の由来は、設立に尽力したグロデコフ総督(1843~1913年)にちなんでいます。
展示は他にも、石器時代の出土品を整理した「考古学」や、19世紀半ば以降のロシアの東進に関わる「ハバロフスク地方史」、古代ロシアの生活文化を伝える「児童博物館」などのセクションがあります(地方史の展示の説明はまた別の機会に)。
博物館への行き方は、コムソモリスカヤ広場から河沿いの通りを徒歩5 分ほどです。博物館の裏側に出ると、遊歩道があって、アムール河の雄大な流れを眺めることができます。
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